2016年7月10日日曜日

第5回半喜利 1回戦の採点感想


グループA
お題:最近話題の有印悪品ってどんなお店?

5点 温かい図鑑さんの作品(2位)
いろんな動物の歯形が店員の腕で見れる

3点 石井秋水さんの作品(1位)
手に取って眺めたものを真後ろに放り投げる客が多い

1点 IkorihaYimiranさんの作品(5位)
野良の麻薬犬のマーキングを辿って行けば着く

5点のと3点のは白眉で、どっちを上にするか迷った。
1点のは、4位のはだしさんのネタと迷って、こっちにした。

グループB
お題:知らないと損!○○○!

5点 大友ヒップホップさんの作品(1位)
知らないと損!窒息死の寸前一瞬だけ聞こえてくる落語がある!

3点 アイスさんの作品(9位)
知らないと損!器が大きい泥棒だから手口を教えてあげるよ~盗まれたけど良い思い出ができてよかったね!

1点 ごはんでしたさんの作品(6位)
知らないと損!かいけつゾロリに家族はいない!

自分がいたグループ。僕は3位だった。点はそこそこ稼げたけど、狙いは外れてた。
5点つけた大友さんのネタは、面白い。このラインの攻め方に安定感がある。
3点のやつ、良いと思ったんだけど、沈んでた。気を付けよう。
かいけつゾロリは愛読シリーズのひとつだった。母親は他界してるけど、父親は存命のはず。

グループC
お題:画像で一言


5点 三つ巴さんの作品(3位)
誰もおむつを履いてなかったのはこの時だけだった

3点 ようこそ哲夫ワールドさんの作品(5位)
ディズニーランド行くんで子ども預かってください

1点 モスオさんの作品(4位)
抱きしめると誰もいない部屋にいる

5点のやつが秀逸で、まったく迷わなかったけど、1位じゃないのが意外。
1位と2位のネタに点をつけてなくて、ずれてるのかも、と少し不安を感じる。
どうでもいいけど、お題のお婆ちゃんはお母さんに似で、お爺ちゃんはお父さん似。
どっちの親なのか分からない。どっちかといえば、お父さん側かな。

グループD
お題:「今までの苦労が台無しっ!」って言われたけど 今までの苦労って?

5点 鉛のような銀さんの作品(3位)
素手で八合目まで拭いてきた

3点 鋼鉄さんの作品(1位)
終点の駅まで痴漢の手を尻で挟み続けてた

1点 ごまぱんさんの作品(6位)
20万光年かけて来たのに、地球にはゼョぱゑソスがなかった

順当、という感じ。
このお題、「台無し」が何なのかは語らないのが筋だろうな、と思って採点した。
5点と3点のは、その苦労の先に何が起きたのかが分からないところが良い。
1点のは、語っているようで語っていない、という視点。

グループE
お題:このお薬を間違えたタイミングで飲んでしまいますと、○○○

5点 fromyohさんの作品(2位)
このお薬を間違えたタイミングで飲んでしまいますと、今後全てのタイミングを間違えてしまいます

3点 五言舌禍さんの作品(4位)
このお薬を間違えたタイミングで飲んでしまいますと、あなたが中耳炎になるまで加湿器を当てにいきます

1点 sudoさんの作品(6位)
このお薬を間違えたタイミングで飲んでしまいますと、胃が大爆発して少し吐き気がします

点と順位が、奇数と偶数の組み合わせになってた。
1位のは、点とるだろうなとは思ったけど、入れなかった。
お母さんが登場するネタは、何となく一歩引いてしまう確率が高い気がする。
3点のやつは、薬の効用とかではないんだけど、前後の繋がってなさがなんか好きだった。

グループF
お題:画像で一言

5点 ポノヨゾさんの作品(1位)
新聞食べても賢くならんだろ

3点 キーウィさんの作品(4位)
うな重の香りか?食ってきたからな

1点 かーたーさんの作品(8位)
余計な言葉ばかり覚えるアンドロイドはこうやって黙らせる

ネット大喜利の文脈を知らないと、この手のお題で上位にはなれない気がする。
文章お題みたいに明確な問いがないから、どう答えるかって部分に経験が響く。

グループG
お題:今年の夏の目標を教えて下さい

5点 JIN Liteさんの作品(8位)
好きな子に図書カードを渡し「これで2倍借りられるね」と微笑んで刑務所に吸い込まれていく

3点 スパムちゃんさんの作品(5位)
カルメ焼きでこの島を出る

1点 みちゃんさんの作品(7位)
RIP SLYMEに加入する

ずれまくってた。5点のやつとか、迷いなく選んだんだけど。
僕の感覚だと、1位や2位のネタと比べて、文句なくこっちのほうが面白い。
3点と1点のは、単純に好きな単語が出てきたから笑った。

グループH
お題:経営者だろうが、アルバイトだろうが、○○○って事は同じです

5点 つばむさんの作品(1位)
経営者だろうが、アルバイトだろうが、象飼っちゃったら仕事よりもそりゃ象だろって事は同じです

3点 夜勤さんの作品(3位)
経営者だろうが、アルバイトだろうが、正座した太ももとふくらはぎの間に手を挟むと温かいって事は同じです

1点 冬の鬼さんの作品(2位)
経営者だろうが、アルバイトだろうが、傘は開けた人間が閉じるって事は同じです

5点のはダントツで面白かった。やっぱり点数も図抜けて1位で、そりゃこれだよね、と。
このグループは、全体的にこなれた印象を受けた。ちゃんと横並びで比べられる感じ。
だから、差を見つけやすくて、点をつけたのと結果の順位とにずれが少なかったのかも。

グループI

お題:画像で一言

5点 試し履きさんの作品(1位)
私はトマトみたいな車に乗っているからそれも恥ずかしいし

3点 虎猫さんの作品(2位)
早歩きしない?男女でやってるの見たことない、きっと新しいよ

1点 ami(愛染翔子)さんの作品(4位)
この後マトリョーシカみたいに10回割れてその度にひと回り小さくなったやつに同じ事を言われる

5点のと3点のが、すごい面白かった。うわーってなった。
画像お題で、この質のネタを書けるのは、尊敬してしまう。
1点のやつもよくて、3位のネタとどっちを選ぶか迷った。
3位のを選ばなかったのは、1位のネタと要素がかぶってたから。

グループJ

お題:最近の声優に求められているのは 演技力・美貌・あと一つ挙げるとするならば?

5点 ツイタチさんの作品(1位)
ご立派

3点 木山さんの作品(4位)
体調

1点 スターどっきり身柄拘束さんの作品(9位)
チンコ画像リプにも動じない精神力

5点のやつ以外は、どれにしようか迷った。前向きな迷いではない。
お題のリズムからすると、単語か、文字数少な目のほうが面白くなる気がした。
一方で、単語だけで面白くするのは難しい。面白い単語を選ぶのはマイナスだから。


2016年5月15日日曜日

ぼけおめ大リーグ第199戦その3(2Aツボあげ)


引き続き、第199戦の振り返り。今回は2A。
Aブロック、Bブロックと順にツボあげしていきます。

Aブロック

【お題】
日本の平和を守るため、どんな努力をしているの?

範囲が広いお題。ネタはつくりやすいけどウケにくい、という印象。
日本とか平和とか、縛りっぽい要素もあるけど、実質意味はない。
この手のお題だと「奇行」や「珍プレー」みたいなものなら何でもアリになる。
「間違った努力」みたいなずらし方でいかにお題とフィットさせられるかが決め手かな。

【ツボあげ1】
裸足に近い靴を燃やしてる
(温かい図鑑さんの作品)

4位のネタ。「裸足に近い靴」という言葉が、グッときた。
日本は路上が綺麗だけど、それでも尖ったものとかたまに落ちてる。
平和というか安全だけど、短めの文章にまとまってて切れ味がある。

破壊系のワードは、結構選択が難しい。「燃やす」は便利でよく使われる印象。
「粉々にする」とか「握り潰す」とか「シュレッダーにかける」とか、色々あるけど。
なんで燃やすとか焦げるって面白いんだろう。炭とか灰になる絶望感は不謹慎だけど笑える。
原型が残ってないほうが愉快なのかな。もう絶対戻らない、というある意味での安心感がある。


Bブロック

【お題】
「あ、この拷問だったら全然平気」
どんな事されたの?

こっちも広いお題、と見せかけて実は結構狭い気がした。
「されても全然平気なこと」とか「されても嫌じゃないこと」というだけではない。

キーワードは当然だけど「拷問」で、「拷問的な責め」が出てこないと駄目だと思う。
多分その特徴は「じわじわ感」なのかな。拷問って、一発の怖さではない。
「この恐怖が延々と続くのか」と思わせることが拷問の主旨だから。

じわじわっとした恐怖を生みそうなんだけど、別に苦しくはない。
酷いことをされているようで冷静に考えるとそうでもない。
そういう、絶妙なバランスが求められる。面白いお題だよね。

【ツボあげ1】
家族の名前を書いたフルーツがミキサーにかけられて、どんどんおいしいジュースが完成していく
(きまぐれさんの作品)

3位のネタ。面白い。良く練られてるな、って感心してしまう。
お題にばっちり沿ってる。拷問的だけど健康的。

大家族スペシャルとかに当て嵌めて想像してしまったから、なお面白い。
お父さんが縛られてて、十何人の子供の名前が書いた別々のフルーツある感じ。
ジュース、最終的にはどうするんだろう。お父さんに飲ませるのが面白いのかな。
でもなんかそれはちょっと精神的にきつい気もする。あんまり平気じゃない。

【ツボあげ2】
「こんな感じで続けといて下さ~い」と、1人にされた
(テテアさんの作品)

6位のネタ。面白い。
一応、スカシネタってことになるのかな。何の拷問か分からないから。
3Aでもあったけど、スカシ方がメタにお題に答えてるから、まるっきりスカシでもない。

「こんな感じで続けといて下さ~い」の投げやり感がとにかく良い。
このセリフ、「~」があることが、ゆるさを増幅させてて効果的だと思った。
「~」がないと、拷問官の冷酷さがちょっと出てしまって怖い感じになる。

【ツボあげ3】
効能が全部言えるまで浸からされる
(とくめいさんの作品)

7位のネタ。うまい。面白い。
完璧にお題に沿ってて、これだ、という感じがする。

文章としても洗練されてる。書きすぎてないところが素敵。
「浸からされる」の前に「温泉に」とか「薬湯に」とかを書いてないところが良い。
つい書きたくなっちゃうけど、それをしなくてもそれは伝わるから、しないのが正解。

【ツボあげ4】
ムチで叩かれるたびに安産の知らせが届く
(きまぐれさんの作品)

9位のネタ。なるほど、と思ったネタ。
このパターンは、自分は想定できてなかった。

「拷問自体がゆるい」のではなく、「拷問のきつさと同等以上のメリットが同時にある」というもの。
確かに、この形でもしっかりお題に沿ってるし、ネタとして面白さを出すこともできる。
「AされるたびにB」は使いやすい形だけど、このお題には特に嵌まってて気持ち良い。
AとBの因果関係は実はどうでもよくて、むしろ関連性がないほうが面白いことが多い気がする。

【ツボあげ5】
豆腐だけで腹パンパンにされた

(象さんの作品)

21位のネタ。単純なんだけど、面白い。
なんだろう。ひとつ文章として笑える。
日常会話でも使えそうなネタ、という感じがする。

以上。

2016年5月13日金曜日

ぼけおめ大リーグ第199戦その2(3Aツボあげ)


URL:http://2.pro.tok2.com/~reflection/league3/vote.cgi?no=3199

前回はメジャーについての記事でしたが、今回は3Aのツボあげ。
一緒の記事にまとめる、という考えもあるけど、一度の更新で扱うには量が多い。
ひとつのリーグにつき、ひとつの記事をつくる形でやってみる。

【お題】
マラソン大会優勝おめでとうございます。
それでどんなズルしたの?

陸上競技のお題は、よくある印象。
マラソンという限定はあるにせよ、基本は「競走」なので、類似お題が多い。

一斉にスタートして、長々と走って、ゴールする、という単純な形。
給水とか、バイクの先導とか、路肩の応援とか、サングラス投げたりとか、要素もベタ。
下手な要素だとマラソンじゃなくても適用可能で、抽象度が高くなる。

「面白い画(え)」をつくるという点ではやりやすいのかもしれない。
でも、どうやって他の人の違いをつくるか、という点が難しい。
さらには、既視感の無いネタを用意することも、やはり難しい。

【ツボあげ1】
弁護士がゴールするまで何も話しません
(NO FUTUREさんの作品)

1位のネタ。これはもう、ばっちり点が獲れる。
「弁護士」は、奇を衒ったワードチョイス、という感じではない。
ひょっとするとありがちなアイテムだし、セリフとしてもオーソドックス。

ただ、マラソンとの組み合わせが、恐ろしくきれいに嵌まってる。
陸上でもそうでなくても、他の競技では、この切れ味は出ない。
遠泳やトライアスロンだと、競技内の要素を使うことになるだろうし。

スカシといえば、スカシのネタ。質問の答えを言ってないから。
ただ、弁護士も走ってる時点で、なんかグルになってやったのかな、という想像は生まれる。
そういう意味では、スカシの内容自体が、質問の答えの示唆にもなりうる。
面白かったです。

【ツボあげ2】
力うどんをキメた
(冬の鬼さんの作品)

18位のネタ。面白いでしょ。
もっと上の順位で良いと思うけど。
マラソンの要素があんまりないからかな。

「力うどん」は強いワード。「力うどんキマりました」って、ポップなコピーだ。
立ち食いのお店とかは、こういう言葉を店先に掲げたほうが良い。

以上。

2016年5月12日木曜日

ぼけおめ大リーグ第199戦

自分のネタの振り返りと、ツボあげ。

【戦場】メジャー、投稿数30、投票数64
【順位】ネタ1:7位、ネタ2:29位
【結果】メジャーに残留(15人中7位)

いつの間にか久しぶりのメジャーに復帰していた。
残れて良かったと胸をなでおろすばかり。

【お題】
政界のマドンナとして、いつも心掛けている事は?

範囲の狭いお題は好きだけど、「政界」は難しい。
一般に連想できる光景やワードが限られていて、しかも堅苦しい。
少しマニアックな知識を盛り込むと、まったく伝わらないネタになってしまう。

お題に沿った共有可能な要素を盛り込みつつ、周囲とかぶらずに面白く仕上げる。
基本はいつも変わらないけれど、その基本を踏襲するプロセスが、今回は苦しかった。

【ネタ1】
殉職したボディーガードの金玉を義眼にしてる
計51点:4点4人、3点5人、2点10人

「ボディーガード」や「SP」という要素で攻めよう、と思った。
色々こねくり回しているうちに、「金玉」を使うことに決めた。
マドンナ、という言葉から連想される堂々としたイメージと男の金玉は相性が良い。

金玉をどうしよう、と考えた。
真珠みたいにネックレスやイヤリングにしようかな、などと思案していた。
しかし、もっとロックな感じで装着していたほうが素敵だと思い、義眼にした。
結果として、マドンナというよりは「女帝」みたいになってしまったかもしれない。

個人的に、「金玉」は、もはや下ネタではないと思う。
下品ではあるけれど、いやらしさがない。ファニーなアイテム。

【ネタ2】
記者に撮られた陰部に黒い霧がかかる
計13点:4点0人、3点1人、2点5人

こっちは普通に下ネタ。陰部は「知られたくない不祥事」との二重の意味。
「黒い霧」は、1966年の政治不信事件から引用した言葉。
自民党絡みの不祥事が次々と発覚して、永田町は「黒い霧」に覆われていると形容された。
不祥事としての黒い霧、モザイクがわりの黒い霧、陰部周辺の毛、という三重の意味。


【ツボあげ1】
足を組み替えるときチラッと政党を見せる
(いかそうめんさんの作品)

1位のネタ。1位はこれだなって、投票画面を見て思った。面白い。
完璧にお題に沿っているし、大喜利の基本に則っている。すごい。
「政党」の部分は、意外と何を嵌めるかが難しい。
「国会」とか「政策」とかもありうる。でもやはり政党かなと思える。正解のネタ。

【ツボあげ2】
リムジンのまま細長いネイルサロンに行く
(うすらさんの作品)

5位のネタ。「細長いネイルサロン」がすごく良い。
シャッターが開いて、リムジンで入って、車の窓から指だけ出してる光景が浮かぶ。
映画とかドラマとかだと、そのシーンではマドンナの顔は映らない。手だけ。

【ツボあげ3】
赤ん坊同士に世話をさせとけば母親は仕事を続けられる、そのためには?
(ツイタチさんの作品)

12位のネタ。書き方というか、切り口が面白いと思った。
マドンナは政策とか法案を考えてるんだけど、そのベースの発想が狂ってる。
「そのためには?」って、きっとすごい真剣な顔して考えてる。
すごい高いビルの一室で、窓から景色を見て、保育園にズームしてく感じ。

以上。

2016年5月11日水曜日

『十角館の殺人』(綾辻行人|1987年)


シャ乱Qのまことを雑に老けさせて色付きの眼鏡を与えると、綾辻行人になります。長らくそう思っていましたが、改めて画像検索をしてみると、類似率は15%ぐらいでした。まことのお父さんの従兄の長男が綾辻行人、といったところ。まことにとっては、子供の頃に1度だけ会ったとき珍しいバタフライナイフを見せてくれた「ユキトおにいちゃん」です。

『十角館の殺人』は綾辻氏のデビュー作で、1987年に講談社から刊行されました。綾辻氏は、多くのミステリィ作家を輩出していることで有名な「京都大学推理小説研究会」に所属しており、「十角館」は氏が大学院生のときに上梓されたものです。

まさしく「推理小説好きが書いた推理小説」という感じで、随所にマニアックな空気が充満しつつも、本格ミステリィとして綺麗にまとめられています。人伝に聞いたのですが、京都大学において様々な講義を教室の最前列で聞いている集団がおり、それが、推理小説研究会のメンバーなのだとか。あくまで噂ですが、それぐらい好奇心旺盛に様々な知識・情報を吸収しなければ、かっちりした推理小説を書くことは難しいのかもしれません。

実のところ、僕は綾辻氏の作品にそれほど熱を上げているわけではないのですが、「十角館」を読み終わった後は次の作品も読んでみたいと思いましたし、次を読み終わったときは、その次を買いに行きました。その大きな理由は、綾辻氏の作品群、特に「十角館」から始まる「館シリーズ」が、コンテンツの安定感もさることながら、アーキテクチャに素敵な工夫が施されているからです。ここでは、前者は、キャラクター、ストーリー、個々のトリックなどで、後者は、プロットや作品全体を包むトリックなどの要素を意味しています。

つまりは、どの作品にも「大きな仕掛け」が組み込まれており、終盤におけるどんでん返しや意外な事実の表出が楽しめるので、読み進めながら期待感が膨らんでいき、その期待が裏切られることは概ねありません。どの仕掛けも巧緻で綺麗で、綾辻氏の頭の良さが伝わってきます。もっとも、僕は「何か仕掛けがある」という事前情報を知りながら読んでいたのでそういった楽しみ方でしたが、何も知らないで読むと、どういった反応になるかは分かりません。

「十角館」の物語自体は、とある大学のミステリィ研究会の面々が孤島に建つ奇妙な建物で次々と殺されていく、という王道(ベタ)です。誰が犯人なのか。どのような方法を使ったのか。文中で提示される情報を頼りに、読者は推理をすることができます。

文庫本の裏表紙にもそのようなあらすじが書いてあり、親切なことに、「鮮烈なトリックとどんでん返しで推理ファンを唸らせた」といった煽り文句まで書いてあります。それが、僕が事前情報を知りながら読んだ理由です。あらすじは事前に見る派です。

以上。

2016年5月10日火曜日

「統計の威力:情勢判断・意思決定の数学」(Newton|2013年12月号 特集記事)


統計は便利です。分析/解析の専門家であるデータサイエンティストは、「21世紀でもっともセクシーな職業」とも言われています。セクシーは便利なので、やはり統計は便利です。

kindleストアのキャンペーンで、Newtonの特集記事の抜き出しが99円で販売されていたので、タイトルに興味があったこともあり、うっかり買ってしまいました。「お金を払う」という行為を「ボタンを押す」という行為に置き換えたことで、人類は「お金を払うと、お金が減る」という感覚を失いつつあります。

記事の中では、「これを知りたいときは、こういう手法」といった具合に、統計解析のケーススタディが幾つか紹介されており、実践的で、勉強になりました。最も単純な事例は、「ビールを買う人は、セットで何を買う傾向があるか?」といったもの。買い物カゴになぞらえて、「バスケット分析」などと呼ぶ場合もあります。レジのデータ(POS;Point Of Sales)を集計することで簡単に分かり、「これとこれは一緒に買われやすいから、売り場を近づけておこう」といった判断を導くことができる、と説明されていました。

他にも、「10年後のワインはいくらになっているか?-相関分析・回帰分析」「広く深い湖に、(特定の)魚は何匹いるか?-捕獲再捕獲法」「生命保険の保険料はいくらにすべきか?-死亡率の推定・生命表」「あのパン屋は、パンの重さをごまかしているのではないか?-標準偏差と正規分布」「現在の政権は、どのくらい支持されているのか?-世論調査・ランダムサンプリング」など、実社会で用いられている方法が説明されており、イメージを浮かべながらふむふむと読めました。

特に、「未成年の飲酒率はどれぐらいか?」を調べる事例が、興味深かったです。普通に聞き取り調査をしたのでは、未成年のときに飲酒経験があっても、回答者は「ない」と嘘をつく傾向があるので、「コイン投げをして、コインが表だった人は"はい"と言い、コインが裏だった人のうち、未成年飲酒をしたことがある人も"はい"と言ってください」と聞くことで、正直なデータをとることが可能になります。この方法で100人に聞き、「はい」が70人だった場合、コインが表になる確率は50%なので50人は除外すると、残りの50人中20人が「未成年飲酒をしたことを意味する"はい"」であることが分かるので、未成年飲酒率は約40%、と推定することができる、という理屈です。しかしながら、匿名のアンケートか何かで聞けば早そうですし、「正確らしいデータを効率的に採集する」ことが統計の鍵だと思うので、これはおそらく悪い例です。

数字として、データとしての分析と理解は、端的には抽象化を意味します。あるドリアンと別のドリアンを、「2個のドリアン」としてまとめることは、個々のドリアンの個体差を無視します。未成年の飲酒経験をYESかNOかで聞くことは、どのような流れで飲酒に至り、どのような酒をどの程度摂取したのか、という事情を無視します。記事の中で、サンプリングについて、「スープの成分を調べるために適量をスプーンで掬うこと」といった比喩が書かれていました。人間の集団をスープに見立てることは、理解の効率を飛躍的に高めますが、個別具体的な状況や背景は棄却され、気を配るべき大切な要素を見落とすことになります。人間を理解することは、テイスティングとは違います。

しかしながら、記事の後半では、近年は自動的に多種多様大量のデータを収集・蓄積するシステムや高度な解析システムの登場により、いわゆる「ビックデータ」の時代となり、以前のように母集団からサンプルを抽出しての分析ではなく、全データを対象に分析をかけることが容易となった為、より正確な、精緻な分析結果を導出し、判断に用いることができるようになってきた、という話が出ていました。背景もプロセスも個別の事情も、すべてデータ化できる時代が近づいているのかもしれません。

最後に載っていた統計学の権威のインタビューでは、「数字がなければ世界は理解できないが、数字だけでも世界は理解できない」といった、警鐘の言葉がありました。僕自身、以前アルバイトで統計解析(マーケットリサーチ)をやっていましたが、個人的に大切だと思うのは、分析/解析によって導き出された結果をどのように解釈し、それをもとにどのような判断をするか、ということです。

例えば上述の「これとこれは一緒に買われやすい」という結果からは、「ということは、こういうものもセットで買ってもらえるのではないか?」という想像ができると思いますし、「売り場を近づける」という判断以外にも、「どうせセットで買ってもらえるから、わざと売り場を離して、間の道のりに関連する商品を並べておこう」という判断も可能なのではないでしょうか。データの収集や解析はコンピュータがやってくれますが、こうした想像と判断は、人間の能力が試される部分でしょう。

話は少しずれますが、記事を読んでいて、「サンプリングされたデータは、ドット絵に似てるかも」という発想が浮かびました。きめ細やかで実物そっくりのCGよりも、画素が荒くて色の少ない絵のほうが実は本質を描いている場合もありそうだな、と思う次第です。

以上。





2016年5月9日月曜日

『オーデュボンの祈り』(伊坂幸太郎|2000年)


森博嗣氏と京極夏彦氏が龍虎として君臨しているので、好きな作家ベスト3を挙げよ、という質問に答えるのはとても難しいのですが、伊坂幸太郎氏が3人目の候補であることは、確かです。人気作家なので、一般的には、上位2名より知名度が高いかもしれません。

伊坂氏の作品は、推理小説とは呼べない作風・物語が多いですが、ある種の「謎」が提示され、話が進むにつれてその真相が明らかになっていく、という形式も多いので、広義にはミステリィに区分可能でしょう。

氏の作品の魅力は、一般の評判においても、僕自身の認識においても、気が利いて洒落た会話や文章と、張り巡らされた伏線を綺麗に回収する精緻なプロットにあると思います。書籍に載っている著者紹介にも、「洒脱なユーモアと緻密な構成で読む者を唸らせ…」と書かれていますし、読んでいても、そうした巧さに引き込まれることが多いです。

『オーデュボンの祈り』は、氏のデビュー作で、2000年に新潮社より出版されました。「荻島」という外界から隔絶された架空の島を舞台に、現実とファンタジーとの中間のような物語が展開されます。登場するのは、事実と反対のことしか言わない画家、未来を知ることができる喋る案山子、島のルールとして自己判断による殺人を許された男、反吐が出るぐらい悪人の警官など、およそ普通ではない面々。

物語の最大の謎として提示されるのは、未来を知ることができて人間の言葉を操る案山子・優午(ユーゴ)が、何者かに殺されるという事件で、未来が分かるはずなのに何故自分の死を防げなかったのか、どうして身に迫る危険を事前に誰かに伝えなかったのか、が焦点となります。この、御伽噺のようでありつつ現実的でもある世界観も、魅力のひとつです。

ミステリィの様相を呈しているけれど、設定がシュールなので、よくある探偵小説とは異なるロジックで推理が進みます。但し、魔法でも超常現象でも何でもあり、というわけではなく、定められたルールの範囲内で、なぜ、どうやって、どうして、が思考されるので、一種のゲームのようにも感じられます。別の機会に感想文を書く予定ですが、西澤保彦氏の「SF新本格ミステリィ」に近いジャンルかもしれません。もっとも、これ以降の作品は、もう少し現実に近くなるので、この作品が最もファンタジー色が強く、そういう点では、伊坂氏の作品の中でも、特殊な位置にある気がします。

タイトルにもある「オーデュボン」は、実在した画家・鳥類学者のジョン・ジェームズ・オーデュボン(1785~1851年)のことで、リョコウバトという鳥が、オーデュボンとこの物語とを繋いでいます。リョコウバトは、億単位の群れで空を飛ぶとされ、鳥類史上最も多くの数がいたと言われていますが、乱獲によって20世紀初頭に絶滅したそうです。あまりにも数が多かったため、ちょっとぐらい減らしても大丈夫だろうという考えが蔓延し、結果として数十億、数百億というリョコウバトが根絶やしにされました。

この話は、「人間は失わないとことの大きさに気がつかない」ということと、「悪い方向に進む兆候を感じても、簡単にはそれを止められない」ということを示唆するエピソードとして物語の中で紹介されており、そうならないでほしいという「祈り」と、祈ることしかできないという無力さが、重要なテーマにもなっています。少し書きすぎているかもしれませんが、あくまで僕の感想なので、ご容赦ください。

以上。




2016年5月8日日曜日

『姑獲鳥の夏』(京極夏彦|1994年)


僕の好きな作家で、森博嗣氏と双璧を成しているのが、京極夏彦氏です。出版量の関係で読んだ冊数こそ森氏の作品のほうが上ですが、個々の作品の刺さり具合は、京極氏の作品のほうが上回っているかもしれません。それぐらい好きです。

『姑獲鳥の夏』は、京極氏のデビュー作です。1994年に講談社から出版されました。2005年に豪華キャストにより映画化されていますが、ヒットしたのかどうかは分かりません。映像には映像の良さがあるのは理解できますが、京極氏の作品は、活字で読むほうが圧倒的に質の高い体験ができる気がします。

僕はミステリィ好きなので、この京極氏の作品も、基本的には推理小説です。不可解な事件や現象が起きて、探偵役がそれを解く、という骨格。「姑獲鳥」はシリーズものの一作目で、中禅寺秋彦(通称:京極堂)が主人公/探偵役として活躍する作品群は、「百鬼夜行シリーズ」などと呼ばれています。

中善寺は、古本屋の店主であり神主であり陰陽師であり、探偵役としてはあまりない肩書のキャラクターで、事件の解決に「憑き物を落とす」という方法を用います。人智を超えた存在の仕業とも思えるような怪奇、世にも不可思議な事件について、妖怪の名前や性質を当て嵌め、話術で武装した論理的説明によって、落とす。状況を定義することにより、観察・測定・記述可能にするという点で、科学的です。

森博嗣氏のシリーズと京極夏彦氏のシリーズは、理系と文系の両極端に位置する、という評価もあるようですが、個人的には、どちらも論理や科学のルールに則った、そういう意味では理系的なものに見えます。ただ、京極氏の上記シリーズは、物語の舞台が1950年代の戦後間もない日本で、まだ生活環境における学術や情報が圧倒的に不足しており、神秘や怪奇現象がそれとして認識されやすい世界が描かれているため、どこか古典文学的で、文系っぽさが醸し出されているのかもしれません。

「姑獲鳥」のストーリィは、とある病院の娘が二十箇月も身籠ったままであり、また、密室から失踪したとされていたその娘の夫が、あるとき突然死体で現れるといったもの。シリーズ全体を貫くテーマや考え方が提示された作品であり、話としても面白いのですが、正直なところ二作目以降からが本領という印象を個人的には持っており、この作品が一番面白い、とはなかなか言えません。ただ、これを読んでおくと、以降の作品の面白さが増幅されます。

さて、この作品からもお気に入りの文章を引っ張ってみます。作品の冒頭、文庫本で100ページ弱にわたり、中善寺とその友人でメインキャラのひとりである関口との会話があり、幽霊とは何か、宗教とは何か、意識とは何か、記憶とは何か、脳とは何か、心とは何か、といったことについて、この作品/シリーズにおける考え方が説明され、その圧倒的な情報量と論理性に、納得させられます。術にかけられた感じ。そんな会話の中から、特に印象に残っている中善寺の言葉を。

「だいたいこの世には、あるべくしてあるものしかないし、起こるべくして起こることしか起こらないのだ。自分達の知っている、ほんの僅かな常識だの経験だのの範疇で宇宙の凡てを解ったような勘違いをしているから、ちょっと常識に外れたことや経験したことがない事件に出くわすと、皆口を揃えてヤレ不思議だの、ソレ奇態だのと騒ぐことになる。(略)」

これは、日常でも大切にすべきことだと思い、気をつけています。アクシデントや問題が発生したときに、「わからない」「理解できない」「どうしようもない」と思うのではなく、起こるべくして起こったそのことについて、どうして起こったのか、どうすれば解決できるのかをしっかり考える。頭を動かす。当然のことですが、世の中や社会、人間の集団の複雑さに思考停止に陥りがちなので、忘れないようにしたいです。

以上。

2016年5月7日土曜日

『すべてがFになる』(森博嗣|1996年)


好きな作家は?と聞かれたとき、真っ先に森博嗣氏の名前を挙げます。数えてみたらこれまでで同氏の著作を80冊読んでいて、これは、他の作家よりもかなり多いです。もっとも、森氏の著作は、シリーズ物の小説をメインに、短編集、ノンシリーズ、新書、エッセイと幅広く、僕の読んだ冊数の倍ぐらいは出版されていると思うので、ファンではあるけれど、マニアではないです。

森氏は、基本的にはミステリィ作家であり、近年の著作こそいわゆる王道ではなくより広義な謎を描いているような気がしますが、初期のシリーズものは押し並べて本格ミステリィです。そういうつもりで書かれていないかもしれませんが、通常の読者にはそう読めます。

『すべてがFになる』は、森氏のデビュー作で、1996年に講談社から出版されました。近年ドラマ化されたので知名度は高いと思います。僕が読んだのは2004年ですが、いまだにこれを超える小説には出会っていない、と言えるかもしれません。それぐらい面白くて、年に1回は読み返しています。

物語の内容はいかにもな典型で、「孤島の研究所に15年間幽閉されている天才科学者」「その研究所で発生する密室殺人事件」「事件の解決に挑む大学の助教授と女子学生」といった感じです。

森氏の作品はよく「理系ミステリィ」と形容され、数学、プログラム、ロボット、実験施設、ヴァーチャルリアリティ等がトリックや装飾に使われることが多いです。これは、森氏自身が国立某大学で工学部助教授だった(デビュー後もしばらく兼業していた模様)ことが影響しており、そうした知識・背景に裏打ちされている分、「とんでも科学」みたいなものではなく、「物語の舞台設定となった年代相応のテクノロジィ」が使用されています。

メインのストーリィ、トリック、プロット等も好きなのですが、僕が何度も読み返す動機となっているのは、登場人物の何気ない会話や平叙文が醸す洗練性です。

例えば、この作品の冒頭、天才科学者と女子学生との会話。

「165に3367をかけるといくつかしら?」女は突然質問する。
「55万……、5555です。5が六つですね」萌絵はすぐ答えた。それから、少し驚く。「どうして、そんな計算を?」
「貴方を試したのよ。計算のできる方だと思ったから……」女は少し微笑んだ。「でも、7のかけ算が不得意のようね。今、最後の桁だけ時間がかかったわ。何故かしら?」

なんてことはないのだけれど、この手のちょっとしたやり取りが場面の空気を際立たせていて、同時に、登場人物の能力あるいは能力差を示唆していたり、全体のストーリィに関連づいていたりと、緻密な計算が感じられて、唸ってしまいまいます。

読書感想文というよりは、森氏や森氏の作品を僕がいかに好きかという話に偏ってしまいましたが、最初の感想文ですし、特に何を書くか決めているわけではないので、その都度思ったことを書いていきます。

以上。

2014年9月28日日曜日

以前に行った吊り橋

画像の整理をしていたら、4年ぐらい前に行った、吊り橋の写真が出てきた。折角なので、ブログに残しておこうと思う。


静岡県榛原郡川根本町千頭(しずおかけん はいばらぐん かわねほんちょう せんず)の寸又峡(すまたきょう)という場所にあり、「夢の吊橋」と呼ばれている。

見ての通り足場は狭く、橋を支えているワイヤーも細いので、ものすごく揺れる。一度に渡れるのは10人までと制限されているらしいけれど、僕が行ったときは12月だったからか、まったく他の人がいなかった。風景はとても綺麗だったので、人気のスポットなのだとは思うけれど、絶えず観光客が溢れている、というわけではないらしい。

実際に渡ってみた感想は、まずはめちゃくちゃ怖いというのが勿論あって、その次は、財布とか携帯電話とか落としたら嫌だな、というものだった。ズボンのポケットに穴が開いていないか、何度も確かめた。下にある湖には、結構色々なものが沈んでいると思う。


帰り道に、もう一カ所、別の吊り橋に行った。この日は、そういうテーマの旅だった。こちらも同じく榛原郡川根本町にあって、「塩郷(しおごう)の吊橋」の呼ばれている。大井川という川に架かっていて、川のすぐ横に大井川鐡道という線路が走っているので、電車が通るときに渡っていれば、足元を列車が通過していく光景を見ることができる。蒸気機関車が走る時間帯もあるようで、その手のファンの方々には垂涎のスポットらしい。

こちらも渡るときすごく怖かったけれど、ここなら物を落としても何とかなるんじゃないか、という安心感もあった。結局、吊り橋の怖さは、自分が落ちたときや、物を落としてしまったときに、どの程度のダメージを負うか、リカバリーは可能か、といった観点で決まる気がした。

2014年9月24日水曜日

3年半前にこびり付いた刀の錆を、舐めて落とす

ネット大喜利をやっていて、滑ったり負けたりすることで、悲しいとか、悔しいとか、そういった感情を持つことはわりと多くあるが、それよりもさらに深いマイナス状態まで心が落ち込むことはそれほどない。大抵はすぐに切り替えることができ、忘れてしまうものだ。

ただ、ごく稀に、猛禽類の爪で魂を抉られたような、錆びたスプーンで泥を掬って舐めているような思いになることがある。それは、「みじめ」という感情である。

例えば、ネタボケライフの第1282回。もう5年近く前のことだが、このときの異様なまでの滑りっぷりは、鮮明に覚えている。合計で20.88ptsという低さは、尋常ではない。偏差値も26.55で、定員割れの学校にすら入れそうにない。

他には、ぼけおめトーナメント2010-2012の地区トーナメント3回戦。高点のネタは特に問題はないのだが、15位にある低点のネタが酷い。このときは、どうすればウケるのか、どうすれば勝てるのかに執着し、頭の中でぐるぐると色々なことが巡った結果、「和田アキ子のAAネタ」という最悪の選択をしてしまった。有名シェフがいるホテルの朝食バイキングで、ふわふわのスクランブルエッグや厚切りベーコン等々が並ぶ中、ゴムの味しかしない茹でたビーチサンダルをくちゃくちゃ噛むようなものである。

さて、上に挙げたものよりも、鮮明に覚えている「みじめ」がある。それは、今から3年半近く前、2011年の5月の出来事だ。

当時、ぼけおめ大リーグでは、RUNNERS HIGHさんが無類の強さを誇っており、最上層のメジャーリーグにおいて皇帝として君臨していたが、多忙の為、しばらくぼけおめ大リーグでの投稿を休止する、という話を管理人さんに申し出たところだった。僕はまだ大リーグに参戦してから数か月というところで、一進一退をしながらも徐々に上位リーグへと歩を進め、3Aに在籍していた。

僕は「いまランハイさんが休止してしまったら、僕がメジャーに上がれても、憧れの皇帝と戦うことができない」と思い、ぼけおめ大リーグのWebページ上部にある簡易掲示板のようなところに、以下のような書き込みをした。

ジャスティス智彦 > 【管理人様へ】現在3Aにいる僕が第109戦でメジャーに上がることができ、かつRUNNERS HIGHさんがメジャー残留をした場合、RUNNERS HIGHさんは第110戦も参加する、ということにしてもらっていいでしょうか?本人の了承は得ています。我儘言ってすみません。

この試み自体は悪くはなかったと思う。実際にランハイさんと戦ってみたかったし、こうすることで自分の気持ちを鼓舞する意味もあった。ただ、その後の結果に、大きな問題があった。僕はクソみたいに滑り、昇格どころか、2Aに降格した。対するランハイさんはと言えば、メジャーリーグで4位をとり、難なく残留した。

この時ほど、ネット大喜利をやっていて惨めな思いをしたことはない。自分の自惚れや厚かましさに腹が立った。多忙な方を巻き込んで迷惑を掛けてまで我を通したのに、この有様。ただのクソ滑りではなく、破滅である。このときに脳にこびり付いた大きな垢は、ずっと長い間、少しも剥がれ落ちることなく、僕に寄生し続けていた。そして、それからずっと、僕がメジャーリーグに上がることはなかった......


......のだけれど、昨日結果が出た、ぼけおめ大リーグ、第168戦

3年半前の世界に忘れてきたものを、ようやく取り戻せるチャンスがきた。

2014年9月23日火曜日

Natural Information 6:55 p.m.

帰り道のことだ。

電車を降り、改札を通り、自宅へ向かうべく駅の敷地から出たところで、二度声をかけられた。

一度目は正面に居たティッシュ配りの若い女性で、「どうぞー」という声とともに、ポケットティッシュを手渡してきた。ちょうど鞄に入れておく分を補充したかったので、素直に受け取った。隣駅にあるパチスロ店のチラシが挟まっており、バットマンの絵が大きめに、吉田秀彦の写真が小さめに載っていた。

貰ったティッシュを鞄に仕舞っていると、今度は背後から、「すいません」と声をかけられた。自分に対するものかどうか分からなかったが、取りあえず振り向くと、若い男性がすぐ後ろにいた。そして、「これ、落としましたよ」と言って、黒い色のタバコの箱を差し出してきた。

僕は煙草を吸わないし、過去に吸っていた期間もないし、これから吸い始めるとしてもいきなり箱が黒い品種を選ぶことはないので、「いえ、僕じゃないです」と言って、その場を離れた。途中、一度後方に目を遣ると、若い男性はさっきの場所から動かず、手に持った煙草の箱をじっと見つめて、どうしようかと思案している様子だった。

歩きながら、何故だろう、と考えた。何故あの若い男性は、僕が煙草の箱を落としたと思ったのだろうか。そして、ふと考え付いたのが、"Natural Information"という概念だった。

"Natural Information"とは、「人間が自然と発している情報」のことである。その瞬間に頭に浮かんだ言葉だけれど、既に似たような概念の別の言葉があるかもしれない。要するに、自然体の外見、表情、仕草、動作、雰囲気、佇まいなどから発せられるその者の状態や心情や要望のことで、意図されていないノンバーバル・インフォメーションとも言える。

若い男性は、きっと、歩いている僕の背中から、「私は黒い箱の煙草を吸っていて、たまに道端に落としてしまいます」という自己紹介を感じ取ったに違いない。だからこそ、とっさに見ず知らずの男に声をかけ、親切にも煙草の箱を差し出してくれたのだろう。だが、若い男性が感じ取った情報は、残念ながらノイズだった。Natural Informationは、通常、正確に掴み取ることは難しい。

僕は年に一回あるかないかの確率で、混雑している電車の中で貧血や酸欠を起こすことがある。視界が真っ白になり、周囲の声が微かに聞こえる程度にしか意識が残らず、酷いときはほとんど気を失ってしまう。車両の中にある緊急停止ボタンが押される事態になったこともある。

予兆がきた段階で一旦電車を降りて駅のベンチで休んだり、電車内の壁際に寄りかかって深呼吸をしたり、迷惑を承知でその場にしゃがみ込んで回復を待ったりするのだけれど、有難い救いの手が差し伸べられたこともある。

以前、電車が一時停止を繰り返して次の駅までいつまで経って着きそうもないのに、タイミング悪く、「あ、これ、ちょっとまずいかも」という状態になってしまい、シャツの中で一滴の汗が背中をツーッとつたい落ち、吊革を握る手を強張らせたとき、「大丈夫ですか?席、どうぞ」と声をかけてくれた紳士がいた。

そのときは本当に嬉しくて、神様に出逢ったような気持ちになった。寝冷えや下痢で物凄くお腹が痛くてキュルキュルの波がピークのときに辿り着いたトイレのようなもので、人から受ける親切や優しさが如何に素晴らしいものかを再確認させられた。いま思えばあの紳士は、Natural Informationを素早く正確に把握し、それをすぐ行動に反映させられる能力を持っていたのだろう。

ここ最近、電車の中で、「おなかに赤ちゃんがいます」と書かれたキーホルダーを鞄にぶら下げている女性を見かけるようになった。マタニティマークと呼ばれるもので、隠れている部分の言葉を補足すると、「おなかに赤ちゃんがいますので、諸々ご配慮をお願い致します」という意思を持ったメッセージである。

このマークを、僕はとても気に入っていて、同じように「足を怪我しています」とか、「見た目はだいぶ高齢ですがまだまだ健康です」とか、周囲の配慮を促す表示がもっと沢山あってもいいのでは、と思うこともある。つまり、それぐらい、Natural Informationを正確に感じ取れる人は少ないような気がするからだ。

いちいち周囲に見えるように表示したりアナウンスしなければ伝わらない、という状況が良いものとは思わないけれど、どちらか分からず判断に迷い行動にうつせなかったり、誤った解釈をして親切のつもりが相手に不快感を与えてしまうよりは、余程スムーズに事が運ぶだろう。太っているだけなのか、おなかに赤ちゃんがいるのか、老け顔の40歳なのか、若々しい80歳なのか、といった判断材料をNatural Informationだけで正解を掴むことは困難だ。周囲を観察し、人工的なメッセージを見つけて対応するようにしつつ、Natural Informationを感じ取る訓練をしていけばいい。

ところで、疲れていると周りを見る余裕などなく、電車の席で眠りこけるか、スマートフォンをいじって時間が経つのを待ってしまうこともあるだろう。座席に腰掛け、寝ているわけでもないのに目を瞑ったり、本や携帯電話に目を落として、「もしかしたら周囲に着席を必要としている人がいるかもしれないけれど寝てたり読書に集中していたりしたので気付きませんでした」モードを発動させてしまうこともあるだろう。それはそれで仕方がない。たまには自分にも優しくしなければならない。

話が色々と展開して結局何が言いたいのかが散らばってしまったけれど、つまりは、ちゃんと状況を把握して、善意をもって的確に行動できるようになろう、ということだ。もしいつか、僕が黒いタバコの箱を拾ったら、周囲を観察し、落とし主を見つけ、「これ、落としましたよ」と言って差し出し、「ありがとうございます」と感謝されたい。

2014年9月21日日曜日

大喜利PHPの話

大喜利PHP」という所がある。

このブログを見に来てくださる方々には言わずもがなだと思うけれど、ネット大喜利の場を提供しているWebサイトで、データベースや補助ツールが充実しており、参加者が色々楽しめるようシステムが作りこまれている。

一番の特徴は投稿時間と投票時間が基本的には3分ずつしかない、という点だと思われ、参加者にとってネタを考える時間が短い、いわゆる「短考型」の筆頭だろう。

僕はずっと、大喜利PHPとは反対側にある「長考型」のネット大喜利サイトで遊んできた。ボケ天も、ネタボケライフも、ぼけおめも、ネタを考える時間が数時間~数日は与えられ、幾つもネタを考えてどれを投稿するか決めたり、一度考えたネタをしばらく時間が経ってから見直したりすることが可能だ。長考できるからといって参加者全員がネタづくりに時間をかけているとは限らないけれど、実際に使う時間は短かったとしても好きなタイミングで思考できるので、期間を限定された短考とは異なる。

短考型よりも長考型のほうが良質なネタが揃っている、という視点は、間違いではないと思う。ただそれはレベルの差ではなく、ルールの差だ。何事も、費やす時間の長さに比例して、良いものができる確率は高まる。3分で絵を描く場合と、3日で絵を描く場合とでは、自ずと完成品の質に差が出る。ルール上、大喜利PHPでは、良質なネタが揃いにくくなっている、という話だ。

2014年の4月に、初めて大喜利PHPをやってみたときに一番強く思ったのは、「何でこれが上位なんだよ」とか、「こんな単純なネタばっかりなのかよ」といったことだ。それは、参加以前に少し様子を眺めていたときも思ったことでもある。

時間が短すぎて、ただ単にお題に沿うだけのことや苦し紛れに何かを書くことに精一杯で、短絡的で捻りのないネタが多くなってしまっている。長考型のネット大喜利サイトだったらまず最初に切り捨てられるような発想や表現が、平気で跋扈している。自分のネタに対する結果・反応がすぐに出ること、回転の速さ、手軽さなどは魅力的だけれど、面白いネタに出逢いたい、面白いネタをつくりたい、と思ったら、どうにも確率が悪く向いていないように感じる。

しかし、4月から参加してみて、昨晩「OOGIRI CLIMAX SERIES 13」という大喜利PHPの大会に出場してみて、感動させられることも少なくなかった。よくぞ3分でこんなすごいネタを、と思わせられることが、何度もあった。

瞬間的な発想や表現に確かな切れ味があるもの、すべてを突き破るような勢いがあるもの、お題を提示されてから僅かな時間の中で驚くほど遠くまで思考が到達していることが分かる洗練されたもの。プロ棋士の将棋で、残り時間がなくなって秒読みになったときに出る鬼手のような凄みを感じるネタが、幾つもあった。大袈裟に言えば、人間の凄さを感じた。

思い出したのは、『ダイの大冒険』に出てくる魔法使い・ポップだ。作中メインキャラで唯一の一般人であるポップは、序盤こそはヘタレだが、どんどん成長し、最後は勇者であるダイや敵の大魔王にすら肩を並べる大魔導士になる。

そのポップが、最終決戦の場で発したのが、下記の台詞だ。

「残りの人生が50年だって5分だって同じ事だっ!!! 一瞬…!! だけど… 閃光のように…!!! まぶしく燃えて生き抜いてやる!!! それがおれたち人間の生き方だっ!!!」

長考だろうが、短考だろうが、若者だろうが、老人だろうが、関係はない。与えられた時間の中で考え抜き、閃光のように輝き燃えるネタをつくる。それでいいじゃないか、と思った。

いつか僕も、大喜利PHPで、輝きたい。

2014年4月23日水曜日

仮面ライダー電王・視聴記録27話 『ダイヤを乱す牙』

第27話。

映画のプロローグ的な位置付け。
この話を見終わったら劇場へ急げ、というメッセージを感じる。

仮面ライダー電王・視聴記録26話 『神の路線へのチケット』

第26話。

ユウトは星空が好き。
それから良太郎くんを拉致するのも好き。

2014年4月20日日曜日

Twitterでのキャラ化について-ブラック・ジャック編-

鬼太郎編からの続き。

薬によって体がどんどん溶けていく状態になってしまったムーミン谷の面々。鬼太郎が諸悪の根源である吸血鬼エリートを退治し、治療方法を聞き出すところまで話を進めた。次の展開は、実際に治療を行うキャラクターへ移行であり、つまりは、例の闇医者の出番である。

描いたアイコン

ブラック・ジャック先生。
実はあまり漫画を読んだこともアニメを見たこともないけれど、素晴らしく腕の良い医者で、治療相手によっては大金を取る、という基本的な情報は知っていたので、それで十分だった。

自分で言うのもなんだけれど、このアイコンはなかなか完成度が高いと思う。スナフキン、鬼太郎、ブラック・ジャックというキャラ化に挑戦することで失ったものも多いけれど、アイコンデザインの腕前に関しては上達したのではなかろうか。

それはさておき、ブラック・ジャックを登場させた狙いとして、ムーミン谷の皆を治療する以外に、「キャラ化の迷走」という難病を抱えた僕自身の治療、というものがあった。

「おいキミ、完全にユーモアが死滅しているじゃないか。治療するには8兆円が必要だ。」
「傷の浅い段階で対処しておけばよいものを、むやみに長引かせるから継ぎ接ぎの穴だらけになり、ユーモアがすっからかんになるのだ」
「面白くないことが病気なのではない。「これは面白いのか?」「誰かを楽しませることができているのか?」と自問をせずに、面白くないことを続けてしまうことが深刻な病気なのだ。」

こうした一連のカウンセリング・ツイートをブラック・ジャック先生にしてもらうことで、着地点に向かおうとしたわけである。これは、事態の収束のさせ方としては、なかなか上手くいった気がする。無論、ここに至るまでの諸々が酷すぎたので、焼け石に水ではあるけれど。

こうして、闇医者に治療をしてもらい、仮面ライダー電王第19話の「ゼロのスタート」というタイトルを絡めて、キャラ化を終えてまたゼロから頑張ろう、という終着駅兼始発駅に落ち着かせた。途中の凄惨たる状態を考えれば、少しはまとまったと言えるかもしれない。

キャラ化は難しい。めえさんや虎猫さんとやらせていただいたラジオでも喋ったけれど、入り口は簡単だけど、出口がものすごく難しい。キャラ化して初めの頃は、幾つかそれらしいネタで盛り上げることができるけれど、そのキャラからどう元に戻るのか、あるいは、どう次の展開へ持っていくのか、という点に非常に悩まされた。

つまりは計画性の問題で、最初にある程度、全体の流れを決めておく必要があるということだ。例えば全12話のワンクールドラマやアニメの脚本を考えるように構成をし、行き当たりばったりにならないよう気をつけなければならない。そして、スピーディに、コンスタントに物語を進めていく必要がある。つまり、ツイートをテンポよく、かつ、量的にうざくない程度に発信しなければならない。

苦しんだことも多かったけれど、勉強になったことも多かった。ツイッターがいつまで有効なツールとして多くの人に使われるかは分からないけれど、もし機会があれば、キャラ化についてはもう一度挑戦してみたいと思う。

最後まで付き合っていただいたフォロワーの皆さま、途中でフォローを外して警告してくださった何人かの方々(その中には、直木賞作家である桜庭一樹さんもいました。そもそも何故フォローされていたのかは分かりません)、どうもありがとうございました。

2014年4月19日土曜日

仮面ライダー電王・視聴記録25話 『クライマックスWジャンプ』

第25話。

良太郎くんがユウトに誘拐される。
しかしユウトは「俺じゃない」と否定する。

2014年4月17日木曜日

仮面ライダー電王・視聴記録24話 『グッバイ王子のララバイ』

第24話。

前回登場したイマジン・ジークが、電王に憑依する。
そのまま仲間になるのかな......とはタイトルからして思えない。

2014年4月15日火曜日

仮面ライダー電王・視聴記録23話 『王子降臨、頭が高い!』

第23話。

良太郎くん側に、新たなイマジン登場。
またなんかとびきり変な奴。

2014年3月25日火曜日

仮面ライダー電王・視聴記録22話 『ハナせない未来』

第22話。

相変わらず暴走するリュウタロス(電王ガンフォーム)。
そして、ハナが元々存在していた「消えた時間」について新たな情報が。