2016年5月11日水曜日

『十角館の殺人』(綾辻行人|1987年)


シャ乱Qのまことを雑に老けさせて色付きの眼鏡を与えると、綾辻行人になります。長らくそう思っていましたが、改めて画像検索をしてみると、類似率は15%ぐらいでした。まことのお父さんの従兄の長男が綾辻行人、といったところ。まことにとっては、子供の頃に1度だけ会ったとき珍しいバタフライナイフを見せてくれた「ユキトおにいちゃん」です。

『十角館の殺人』は綾辻氏のデビュー作で、1987年に講談社から刊行されました。綾辻氏は、多くのミステリィ作家を輩出していることで有名な「京都大学推理小説研究会」に所属しており、「十角館」は氏が大学院生のときに上梓されたものです。

まさしく「推理小説好きが書いた推理小説」という感じで、随所にマニアックな空気が充満しつつも、本格ミステリィとして綺麗にまとめられています。人伝に聞いたのですが、京都大学において様々な講義を教室の最前列で聞いている集団がおり、それが、推理小説研究会のメンバーなのだとか。あくまで噂ですが、それぐらい好奇心旺盛に様々な知識・情報を吸収しなければ、かっちりした推理小説を書くことは難しいのかもしれません。

実のところ、僕は綾辻氏の作品にそれほど熱を上げているわけではないのですが、「十角館」を読み終わった後は次の作品も読んでみたいと思いましたし、次を読み終わったときは、その次を買いに行きました。その大きな理由は、綾辻氏の作品群、特に「十角館」から始まる「館シリーズ」が、コンテンツの安定感もさることながら、アーキテクチャに素敵な工夫が施されているからです。ここでは、前者は、キャラクター、ストーリー、個々のトリックなどで、後者は、プロットや作品全体を包むトリックなどの要素を意味しています。

つまりは、どの作品にも「大きな仕掛け」が組み込まれており、終盤におけるどんでん返しや意外な事実の表出が楽しめるので、読み進めながら期待感が膨らんでいき、その期待が裏切られることは概ねありません。どの仕掛けも巧緻で綺麗で、綾辻氏の頭の良さが伝わってきます。もっとも、僕は「何か仕掛けがある」という事前情報を知りながら読んでいたのでそういった楽しみ方でしたが、何も知らないで読むと、どういった反応になるかは分かりません。

「十角館」の物語自体は、とある大学のミステリィ研究会の面々が孤島に建つ奇妙な建物で次々と殺されていく、という王道(ベタ)です。誰が犯人なのか。どのような方法を使ったのか。文中で提示される情報を頼りに、読者は推理をすることができます。

文庫本の裏表紙にもそのようなあらすじが書いてあり、親切なことに、「鮮烈なトリックとどんでん返しで推理ファンを唸らせた」といった煽り文句まで書いてあります。それが、僕が事前情報を知りながら読んだ理由です。あらすじは事前に見る派です。

以上。

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